「ざるそば」

「ん?」


 黒髪長髪の男性が、和室に寝転がっている男性に声をかけた。

 長髪の方がそば。寝転がっているのがざるそばだ。


「寝転がってばかりじゃだめだろう?」

「ん~・・・」

「よぉっす!そば~、ざるそば~、いる~?」

「あ、ほら、来たよ」


 ガラガラと引き戸が開く音がして、バタバタと騒がしく廊下を走る音がそれに続いた。


「あー、いたいた」


 2人がいる部屋を通り過ぎようとして、訪問者がキキィーと急ブレーキをかけた。


「お久っ!元気してた?」

「うん。久しぶり。うどん」

 
 うどんと呼ばれた訪問者。長いその白髪を、後ろで乱雑に結っている。


「ざるそばぁ~。出かけんぞ!」

「はっ?」


 上半身を起こしたざるそばの腕をぐいっと掴み、うどんはニカッと白い歯を見せた。


「私もいっていいかい?」

「もちのろん!」

「はぁ?俺は行かね・・・」

「行くよ」

「行くぜぃ!」


 ほぼむりやり、ざるそばはそばとうどんに連れられ、外へと引っ張り出された。