「あ」
パリンッと軽い音が台所から聞こえてきた。
「あ。皿、割った?」
うどんが重たそうな瞼を何とか開きながら、口に出す。
「ちょっ。そうめんくん、大丈夫?!」
皿を割ったのはそうめんのようだ。
慌てたそばの声が、遅れて聞こえた。
「はい・・・。すいません」
「いいよいいよ。指、切ってないよね?」
念の為、そうめんは両の手をそばに差し出した。
「・・・ん。切れてないみたい。良かった」
「すいません」
再度頭を下げるそうめんに、そばは
「頭上げて。そうめんくんは悪くないよ」
そうめんの肩を掴み、上を向かせた。
「そうめんー?だいじょぶ?」
のれんをくぐりかけているうどんが問うと、そうめんはパッとそばの手の上の自分の手を放した。
「はい」
微笑んだそうめん。
「そっか」
安堵した表情で、うどんは再び食卓へと向かい、畳に寝転がった。


