「大丈夫だよ。ちゃんとそうめんくんに印刷した写真渡したら消すからね」


 コトンと左手に持っていたお皿をちゃぶ台の上に置くと、ヒラリと手を振り台所へと消えて行った。


「そうめんには渡すんかい!!」

「うん。・・・あ、別の人のも渡そうか?」

「いえ、結構です!」


 うどんが叫んだのが合図だったように、台所のヤカンが、ピィィーと音を立てた。


「あ、お湯湧いた」


 のほほんとそばがそう言うと、


「じゃぁ、これにお湯かけてもらえますか?」


 髪の毛を耳にかけながら、まだ頬が赤みを帯びているそうめんがまな板と包丁を手渡した。


「うん、いいよ」

「ありがとうございます」


 まな板と包丁を受け取ったそばは、流しの上にまな板を渡らせると、その上から熱湯をかけた。


「何か手伝った方がいいか?」


 のれんをくぐりながらざるそばが問うた。


「て。何やってんの、兄貴」

「ん?消毒だよ」


 まな板と包丁に熱湯をかける兄を見て、訝しげにざるそばが口を開いた。


「今までそのまな板と包丁で生野菜を切ってたんです。トマトとか」

「それで、これからお肉切ろうとしてるから、消毒しないとね」

「へぇ」


 初めて聞いた消毒法に驚いたざるそばは目を開きながら、何度も頷いた。