「はい。なんでしょう?」

「十人十色、だぜぃ。・・・でも、憧れってのは、いいもんだ。おれのこと、憧れてくれたままのそうめんでいてくれよな」


 最初は小さく、でも、どんどん大きく言ったうどんの声からは、そうめんへの気遣いと、励ましの色が見える。


「はい・・・っ!」


 にこりと微笑み、そうめんは声を張り上げ返事をすると、台所へと消えて行った。


「うどんが、今、いいこと言ったな」

「ね」

「なっ、なんでぃ!!いいじゃねぇかい!」


 照れたうどんは大声を出し、もうすでに空だというのに、慌てた様子で麦茶が入っていたコップを煽った。


「あっ。・・・入ってなかったし・・・」

「うどん。ダセェ」

「るせぇ!」


 ちゃぶ台に突っ伏したまま、顔だけうどんの方へ向けた冷麺は、ボソリと呟いた。うどんは、苦笑いをこぼしながら冷麺の頭をはたく。


「照れたうどんはレアだね」


 いつの間にそこにいたのか、右手にケータイ、左手に夕飯のお皿をもったそばがうどんにケータイのカメラを向けて立っていた。


「はい、チーズ」

「やめっ・・・、なにすんでぃ!」

「おー。いい顔~。そうめ~ん、照れたうどんの顔、写真撮ったよ~。焼き増しして、今度渡すね~」

「やっ、やめろ!」


 本気で嫌がるそぶりを見せたうどんは、そばの右手のケータイを奪おうとしたが、手を高く上げられ結局取れず仕舞いだった。