長い黒髪をサイドテールにゆるく結ったそばは、向かい合って座っているうどんとそうめんの間に座った。


「どうして・・・?」

「だって、私が細いそうめんくんのままでいて欲しいからね」


 そう微笑んだそばの笑みに、黒さを感じるのは気のせいだろうか。


「うどんといい、ざるそばといい・・・。私の周りはがっしりしすぎだよ。全く・・・。華奢な男の子なんか、そうめんくんぐらいしか思いつかないよ。冷麺くんだって、華奢と言えないだろう?」


 しょんぼりしたそうめんを励ますように、そばは言った。


「そうめんくんを否定してるみたいかもしれないけど、そんなことはないからね。私は、そうめんくんの為を思って言ってるんだ」

「私の・・・為?」

「そう。・・・考えてごらん」


 遠い眼をしたそばは、天井をぼんやりと眺めながら言った。


「白い肌。それから、美しく整った顔立ちに、肌に負けてないくらい透明な髪。・・・でも、マッチョ」

「・・・」


 全員が「あっ、察し」とでも言いたげになった。

 そう。ミスマッチにも程がある。


「今のままでも、十分綺麗なんだ。そうめんくんは、もっと自信を持っていいんだよ」


 ニコリと微笑んだそばは、立ち上がると、台所へと向かった。


「そう・・・ですよね・・・」


 まだ諦めきれていないのか、そうめんは少し残念そうな声色でそう言い、自分に言い聞かせるように、前を向いて声を張った。


「私は、私のままでいいんですよね!そうです、そうです!さあ、晩ご飯の準備をしなくちゃ」

「・・・そうめん」


 立ち上がったそうめんを呼びとめたのは、うどんだった。