世界は変わらない (A・T)






「ギャーギャー騒ぐ女は嫌い……でも、そんな人じゃないから」


 憂亮はそう言いながら、あたし達から目を離した。



「だ、誰なのさ?」


 驚きすぎて声が震える。


 憂亮はゆっくりと、聞き取れないほど小さい声で答えた。


「…ゆ……な」


 やっと聞き取れた言葉に、目をパチクリさせる。


 ゆな?

 誰それ?


 聞いたことない名前だった。



「ゆなちゃんって子?」


 隣にいる癒伊奈がそう聞いた。

 何処か、悲しげに。


 一生懸命普通を気取っているけど、癒伊奈は憂亮のことが好きなんだよね。

 癒伊奈の目に、涙が溜まっていく。



「ちっ……」


 憂亮はなにかを言おうとしたけど、癒伊奈は我慢できなくなって走り出してしまった。



「浜口先輩!!」


 憂亮はそう呼び止めたけど、当然、癒伊奈は止まらなくて教室を出て行ってしまった。


 憂亮も癒伊奈と何度も会ってるし、離したこともあるのに。

 なのに今まで気づかなかった、今も癒伊奈の気持ちに気付いてない憂亮の鈍感さにムカついて、あたしは、


「このバカっ!!追いかけなさいよ!てか鈍い!!癒伊奈の気持ちも考えたら!?」

 と言い残して癒伊奈を追いかけた。