世界は変わらない (A・T)







 坂野刑事が必死にメモを取る一方で、隣の中橋刑事は何処か上の空だった。

 ……違うことを考えているみたいだった。



 それにしても、あたし、二人に守られていたんだ。

 だから、大丈夫だったんだ……。


 そのことに、嬉しくなった。



「俺は目を瞑ってたんで、目を開けた時にはもう……」




 林が、言葉を詰まらせて、顔を歪めながら下を向いた。

 その様子が、全てを物語っていた。




「……なるほど。えっと………」


 坂野刑事は少し間を置いた後、ゆっくりと口を開いた。

「……今から、ご両親をご確認していただきたいのですが」


 なんとなく分かっていた言葉だったはずなんだけど、本当に言われると、やっぱり心にグサッと何かが突き刺さってしまう。


 まだ確信を突かれてはいないけど、なんとなく見える現実を、あたしは中々受け入れられなかった。




「辛いんだったら、断って頂いていいんですよ」


 さっきまで上の空だった中橋刑事が、そう言ってあたしを真っ直ぐに見た。

 いや、正確には〝あたし達三人を〟だけど。



 その言葉を聞いて、あたしの中で何かのスイッチが入った。


 逃げちゃいけないって。

 きっとお母さん達は……。


 だけど、それでも知らなくてはいけない。


 ……現実を。