世界は変わらない (A・T)







 その様子から、あたしは全てを悟った。


 山上も林も、辛そうな顔をして、俯いた。

 苦しそうな、顔だった。



 一瞬、全ての時が止まったかと思った。


 時計の針は冷たく一定に動いているのに。

 隣から、相変わらず無機質な機械音が聞こえてくるのに。


 音もない真っ白な世界に、放り込まれたみたいだった。

 ただ、山上と林の姿だけある、世界に。




「う……」



 『嘘だ』

 そう言いかけて、あたしは言葉を噤んだ。


 だって、ここで、二人の居る所でそんなことを言ってはいけない気がしたから。

 二人は、あたしが目を覚ます前にすでに知っていたんだろう。

 なのに、あたしと笑顔で話してくれた。



 でももしこんなことを言ったら、

 二人の優しさを、二人の我慢を、無駄にしちゃう気がしたんだ。






 三人の間に、妙な沈黙と重い空気が流れる。





 あたしは気づかなかった。

 いや、気付かないフリをした。


 あたしの頬に一筋の涙が伝ったことを。