「何、この箱?」
美優がプレゼントに興味を持ったその時。

俺は予定していた行動に移る。

俺の頭の中では、
美優にプレゼントを開けさせたあと、
俺が付けさせる。…①
そして、そのままいいムードになって…
ベットイン。…②



こんな感じ。
『いかにも女子がやってもらいたい行動』
ベスト10入りの殿堂パターンである。

今のところ予定は順調。



美優の肩に右腕を回し、優しく囁く。
『開けてみ?』
耳元で俺の吐息を感じた美優は、
ビクッと少し驚いた様子だった。

もう美優も把握しているだろう。
これが何なのか。
そしてこの先何をするのか。


美優は、躊躇いながらも箱を開けた。
その箱の中には…何も入っていない。

「え?」
拍子抜けしたような声が、美優の口から漏れる。
俺は思わず鼻でフッと笑った。


そして、その瞬間。
俺は美優を押し倒す。
『なに?なんかプレゼント期待した?』
俺の意地悪スイッチオン。
『お前の事だから、誕生日は俺が良い
とか言うんじゃないかと思って』
「は!?そんなわけないじゃない!
…てか、もう、もらってるし…」
『まぁたしかに。これが初夜ではねーな?』
「初夜って!」

意地悪しすぎたか、美優が顔をうずめた。


そして俺は計画実行。
もちろん、体勢はそのままで。

『ねえ、美優』
「何よぉ」
顔を覆っていた手から目だけが姿を出す。
『お前のネックレス、どうした?』
「え?」
俺は、美優の首についていた
ゴールドのネックレスを指差して言った。


…そう。
これは全部計画的犯行。
美優の前に、空の箱をおいて、
美優の肩に腕を回した時に、
ネックレスをつけたのだ。

ネックレスが入っているであろう箱に
神経を集中させている間に、
隙を狙ってササッとつける。
俺、超テクニシャン。

読者の方も騙してごめそ。(笑)




「しゅうちゃん…ありがとう」
彼女は、涙半分笑顔半分、パズルを解き終わった小さな子供みたいに控えめに喜んだ。
そして、俺の首に腕を回してきた。

シャンプーの香りが、ふわっと香る。
優しい肌触りのその白い肌に、俺はひとつめまいのようなものを覚える。


『今日は、優しくしないよ?』
「やだ。明日に残っちゃうよ」
ゴールドのネックレスをつけているその彼女は、最高に綺麗で、そして繊細。

『明日、休みでしょ?』
「ふふ。こうなると思って休みとったの」
『ほんと?酒飲みたくりたいからじゃなくて?』
「あ、それもあるかもね」
体勢は、徐々にベットインの体勢へ。


着衣がはだけたその彼女は、
いつもより綺麗だった。
そして、いつもより乱れていた。
新しく年を迎えた、俺の一つ下の彼女。
24歳のその年月の、ほんの一部の
記念日。


俺にとっては、一緒に祝えて嬉しいよ。
彼女の顔を見ながら、甘い時間を楽しんだ。