冬も後半。
肌を叩くような鋭い風が吹き抜ける
11月の夜。
すがる様な気持ちで、ある店に入る。


店内に入った瞬間、外とはまるで違う
温かい空気に、一つ深い息が出る。



修哉が入った店は、あるブランドの
ジュエリー店。



「いらっしゃいませ」
店内いっぱいに並ぶショーケースの
手前にいた黒スーツの店員に迎えられる。

「なにかお探しでしょうか?」
『あ、ちょっと愛人へプレゼントを』
そう言った瞬間、店員の顔つきが変わった。
「わぁ!彼女さんへのプレゼントですか?
素敵ですね!」

…この店員、扱いに慣れてるなぁ。
このお店は、ブランドのアクセサリー店
だから、俺みたいな目的で来る客なんて
雑草の数ほど居るだろうに。
まるで初めて俺みたいな客を扱ったような反応。

悪くはないけど。


店員は、高いヒールを鳴らしながら
小走りで奥のショーケースに向かった。
「お客さん、こちらなんかどうですか?」
俺も、餌に釣られた魚のように近づいていく。

本当はこういうの、ちゃんと相手のこと
考えながらじっくり選びたかったな。

『これ、人気なんですか?』
「はい。こちらは今年人気のブルータイプです。クリスマスシーズンを目前として、
ネックレスタイプを贈る方が多くいらっしゃるんですよ」
店員が手袋をつけて大事そうに取った
その商品は、シルバーのネックレスに、
所々、青いストーンがついていた。

俺の彼女は、色が白い。
色白で、可愛い、茶髪の彼女。
彼女は、ゴールドがとても似合う。


俺は、その商品の隣にある
ゴールドのネックレスを見つけた。
そしてそれを、指差して言った。
『これとか、彼女に似合いそうです』
店員は、俺の指差す方向へ目線を変え、
にっこり笑ってこう答えた。
「こちらは色白の女性にとっても似合いますよ。女の子らしくて可愛いタイプですよね。こちらになさいますか?」
『お願いします』
「ありがとうございます。では、あちらのレジでお待ちください」


俺には、婚約している彼女がいる。
今日は、彼女の誕生日である。

 

送ったら、なんて言うだろうか。

彼女の喜ぶ顔が目についた。