祖父の家を後にし、由月は待ち合わせ場所へと急いだ。
帰国後ようやく純と会う事が出来るのだ。

待ち合わせ場所に到着すると既に純は待っていた。「ゴメンネ」と謝ると、二人は小さな居酒屋へと入って行く。
由月は、さっき祖父から聞いた話を純にしはじめた。
祖父が戦争体験者だという事はもちろん分かっていたが、まさかサイパンだとは思っていなかった。
二人の悲しみを少しでも減らしてあげたい…
黙って話を聞いていた純だったが、サイパンで撮影した写真を取り出した。
「観光客がワイワイ写真を撮っているのを見て、こんなんでいいのかと思ったけど、でもこの写真を日本でみんなに見せて、あの時ここで必死に生きようとした人達がいた事を伝えたいと思った。たくさんの慰霊碑で、亡くなった方のご冥福を祈っている人がたくさんいる事を知ってもらいたいって思った。由月のお祖父さんとお祖母さんに、この写真を見せてあげて。亡くなった大切な人は、こんなに多くの人に祈って貰えてるって安心させてあげて。」

帰宅後、由月は純から受け取った写真を見ていた。サイパンでの記憶が鮮明に頭に浮かぶ。
しかし、次の写真を見た瞬間由月は声をあげた。
「………なんで??」
インターネットで由月が見て、心が動いた写真。
なぜ純から渡された写真の中に、この写真が入っているのか…?