偶然の再会から、毎日のように二人はメールや電話のやりとりを行なった。
退屈だった毎日が少しづつ楽しくなってくる。

そんなある日、由月は休日を利用し埼玉の祖母の家に向かった。遅くなってしまったがサイパン旅行のお土産を持って。
家に着くと、祖母も祖父も嬉しそうに出迎えてくれた。
お土産を渡し、サイパン旅行の話をしていたが、気がつくと祖父も祖母も顔色が曇っている。
「どうしたの?」
由月の問いにしばらくは何も答えない二人だったが、やがて静かに穏やかな声で祖父が話し始めた。
「おじいちゃんはね、戦時中サイパンで戦っていたんだよ。そこで我々二人にとって、とても大切な人が亡くなってしまったんだ。いつかお参りに行かないと…そう思っていたものの、あの時を思い出すのが辛くて行く事が出来なかった…」

遠い目をしながら話す祖父。横で俯く祖母。由月が見に行ったあの場所で、祖父も命がけで戦っていたんだ…
これだけ長い年月が過ぎても、忘れてはいけない記憶なんだ…