ふわり。柔らかい黒髪を揺らして顔を上げた少女に、亮は目を見張る。 咄嗟に名前が出なかった。 それほど、〝どちらか〟わからなかったのだ。 少女は耳にしていたイヤフォンを細く白い指で外すと、肩にかけたサーモンピンクのショルダーバッグに仕舞った。 「あきら」 少女の瞳は変わらない、透き通った茶色だ。