低く地を這うような声が背後から聞こえた。
女はゆっくり振り返ると、後ろには長身の男が立っていた。
月明かりに照らされ、顔が陰ってよく見えないのだが、どこか禍々しさを感じさせる風貌をしていた。
「遅い」
少女は、ハァとあからさま大きなため息をついた。
「申し訳ありません、リア様」
男は胸に手を当て、頭を下げる。
「さァ早く」
少女ーリアは、男を睨みつけた。
「承知致しました」
コツコツとゆっくり足音を立てながら、女へと近づく。
男が一歩一歩進むたびに、女は一歩一歩後退する。