部屋に戻ると、長い黒髪をクシで梳かし、真っ白いシンプルなワンピースに袖を通した。


一冊の本を持って、窓を開けた。


窓を開けると、微かに潮の匂いが風と共に私の鼻腔をくすぐった。


…行こう。


そう、小さな決心をすると、部屋の窓を越えた。


そこからは必死だった。


どうか、どうか見つかりませんように。


そう小さく願いながら、柵を越えて、本を抱えて走り出す。


案外簡単だった。
そこからは、自由だった。