ある晴れた昼休み。
いつもの木陰に腰を下ろして、読みかけの本をゆっくりと開いた。
「もう少しで始まるかな……」
何処か期待を含んだ声で呟いていた。

少しするといつも聞いているあの優しい歌声が聞こえてきた。
木漏れ日の下で静かに目を閉じた。

もう僕の中で、ここで過ごす昼休みは特別なものとなっていた。
誰が歌っているのか分からないけど、この歌を聞くと嫌なことも忘れて、不思議と穏やかな気持ちになれる。

風に吹かれて揺れている木々達は、何処か嬉しそうに見える。
ふと、音が止んでしまった。
すぐ後に予鈴が鳴り響く。もうそんな時間か……
名残惜しくも読んでいた本を閉じた。
「また明日……」
そう呟いて、木漏れ日達に別れを告げた…。