結局、奏に話しかけるきっかけが無く、何もないまま一週間が経っていた。

もう一週間ほど奏を見ていない。見つかったら逃げようと思っていたが見かけてすらない。話しかけられないのは澪にとって好都合だったが、少し寂しさもあった。

「急げー‼︎」

三/時間目。3年生は校庭でリレーの練習だった。

あと一週間で待ちに待った体育祭だ。

相変わらず奏は女子に人気の様で、キャーキャーと手を降っている女子に窓際の席の奏は笑顔で手を振りかえしている。

「あんな爽やか笑顔にだまされちゃってさー。男子はバカだと思ってたけど、女子もなかなかバカだね。」

「澪…w あんたもだまされてた一人でしょw」
「沙梨だってそー思うでしょー‼︎」

「はいはい。w」
「大体ねー‼︎あいつ、何授業中なのに手ぇ振り返してんの⁉︎意味わかんな

「ほらほら‼︎次澪の番だよ‼︎トラック内に入らなきゃダメでしょw」
「あ‼︎本当だ、もう来るじゃ…」
ドタッ‼︎

ドタッと澪は倒れる。コースに入る時に走ってきた人とぶつかってしまったようだ。



澪は川岸に寝っ転がって、ぼんやり星空を見ていた。
“おい…こっちも向け…よ。”

後ろから声が聞こえ、体をずらし右に体をむけると、小学生くらいの幼い奏が少し頬を染めてそっぽを向いていた。

あぁ、可愛いなー。ちょっと照れてる所とか。風になびく茶髪とか。目も…ん⁇眼帯つけてる。

“おめめ、どしたの⁉︎”
“ばれたか…wなんか腫れてる。”
“そっかー。大丈夫⁉︎でも…。”
すると、今度は奏が体をこっちに寄せてきた。

“でも⁇”
“眼帯の奏もかっこいいよ///”
“あ、ありがと…。”



「み…みお…みおー‼︎給食だってばー‼︎」

「ん…⁇」

「起きたー‼︎よかったよー‼︎澪、目覚まさないからさー‼︎心配した‼︎」

「ごめん沙梨…。」

「給食持ってきたから食べよ‼︎」

「ありがと…。」

あれ…⁇なんで私がちっちゃい頃の奏を知ってるんだろ…。