放課後。
隣のクラスの親友、沙梨(さり)を廊下で待っているとなんだか廊下の向こうが煩い。すると、

「奏くん‼︎今日一緒に帰ろー⁇」
「見て、奏くんじゃん‼︎」

「げ。やべ、隠れなきゃ。」
逃げようと壁から体を起こすと、

「捕まえたっ。僕の先輩♡」

壁と奏に挟まれる。顔の隣には奏の腕が。いわゆる壁ドン…⁇ってやつだ。

周りにいた女子はびっくりしているのか、固まってる人、泣いてる人、怒ってる人、ヒソヒソ話してる人が見える。

「なに帰ろうとしてるのー⁇ニコッ」
「い、いえ、今から行こうかと思いまして…。」
「そっかー。偶然ですねー。僕も今から行こうと思ってたんですよー。」

目が笑っていない。

「じゃあ一緒に行こうかー。先輩も…」
「偶然て、ここは三年生の二階だけど…。二年生は三階。理科室は一か…」
「つべこべ言ってんじゃねーよ。お前が来ねーから探しに来たんだろーが。ボソッ」

「い、今‼︎帰りの会が終わった所なんだよねえ‼︎実は‼︎」
「はいはい。行きますよ。」

また手を引っ張られ、今度は屋上に続く階段の途中でその足は止まった。

「か、奏くん⁇ここ理科室じゃないよー⁇だ、大丈夫ー⁇」
「お前は俺のものって言っただろ⁇」

どんどん壁側に追い詰められていく。

「い、いや、えっとー、その、私達、昨日出会ったばっかりでしょ⁇それに…昨日、私に何をしたの⁇」

「昨日って…悪気がないのがまた酷いな…。」
「え⁇どーゆーこと⁇」

沈黙の間が空く。

「お前やっぱり覚えてなかったか…。」

「え…⁇」

「どーゆう事…⁇」

「…いいよ。忘れ…だっ…ら。」

「え…⁇なに⁇教えてくれなきゃ分からないよ‼︎」

「…ごめん。」

「だ、だからね‼︎教え「お前は忘れてていい。」
ドッ
奏は澪の胸ぐらをつかみそのまま振り下ろす。

「え…。何それ…」

しゃがんだ澪が見上げると奏は悲しそうな目で澪から目をそらした。

「今日はもう帰れ。」
「話を聞きたいの。お願い‼︎」
「帰れっつってんだろ‼︎‼︎」

「ごめんなさい…」

そのまま澪はバッグを取り、走って校門を出た。