姉が泣きながら帰ってきた。

「あたし…っ、ヒック、素直になれなかっ…っ。あた、し、ウソついた‼︎本当は好きな、のに‼︎」


「……。」


「あたし…っ、本当にバカだよね…っ‼︎」



「バカじゃないよ。」


「…っ、ヒック。」


「…夕ご飯出来てるよ。」




「…。食べる。」



「…ん。」




前にも、姉が泣いて帰ってきた事があった。


今回が三回目かな。


一回目は、帰りが遅かった日。

確か、人形を抱えて帰ってきた。

姉は何も言わずに泣いていた。




二回目は、俺が学校の帰りに公園で姉を見かけた日。

姉を見かけたから、声をかけようと思ったら


姉がお腹を蹴られてるのが見えた。

相手は女子二人、男子三人ほど。

「お前ごときの分際で‼︎」

などと聞こえてくる。


いても立ってもいられず、僕はランドセルを投げ捨て、姉の前に出た。


「お前、誰だ。」

「おれの妹に何してくれてんだ⁇」

「知ってるか⁇」

「知らない…。やっちゃっていいよ。」

「ここまで大人数で…。澪が何をしたって言うんだ。」


「邪魔なんだよ。」

「いい加減にしろ。澪は何もしていない。」


「奏くん…っ、女に興味ないって言ったのに‼︎しかも付き合ってないって‼︎どーゆー意味だよ‼︎」


「…。そーゆーことだろ。」

「うるさい‼︎」

女子は綾斗に殴りでた。




その拳を綾斗は手で止める。


「ケンカは、可愛い女子がやるものじゃないよ⁇ニコッ」


「…行くぞ。」


男子に言われ、女子はまだ諦めてない様子で帰って行った。


「…っ、おねーちゃん、大丈夫⁇」

「あや…と、ごめんね…。」

「ううん、兄ってウソついてもバレなかったね。ニコッ」

「そーだね…っ、」

「兄って言った方が強そうじゃん⁇w」

「そーかも…アハハッ」



「帰ろ⁇」


これが二回目。





そして、今回が三回目。



多分、ウソをついたのはこないだの女子がまだ、怖いからだろう。


あの女子五人は姉と同じ制服を着ていた。


だから尚更だろうな。



「…弟にはこれくらいしか出来ないんだね…。」