翌朝から奏を見かけることはなくなってしまった。

澪は奏が、奏は澪がいつもの様に教室に迎えに来てくれると思っていた。

というより自分からはお互いに恥ずかしかった。


「奏ーっ‼︎帰ろうぜ‼︎」

「お、おう。ちょっと待ってろw」


「澪ーっ‼︎一緒に帰ろ⁇」

「う、うん。ちょっと待ってーっ」


でもそれはちょっと寂しくて。

今までどうやって帰っていたのだろう。

なんて呼び合っていたのだろう。

顔を見たい。声を聞きたい。喋りたい。



「ちょっと夕凪先輩に用があるから教室に寄っていいか⁇」

「ちょっと王子様に用があるから教室行ってもいい⁇」



「澪先輩ー…」

「奏ー…」




「「いない…っ」」


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「綾斗、おねーちゃん好きな人ができたかも。」

「そう。よかったね。」

「冷たいなーっ、綾斗はおねーちゃんが弟離れしてもいいの…⁇」

澪は悲しんでいる表情をして奏の様子を伺う。

「…。別にいいけど。」

「おねーちゃん悲しいよーうああああああん」

「うるさい。近所迷惑。」

「私は綾斗のこと好きなのにいいい」

「…。ふーん。」

姉はいつも僕に向かって好きだの愛してるだのと言葉を並べる。

その言葉がウソだとは思わない。

でも…


その言葉は家族としてだろう。


僕の想いは今までもこれからも…








《届かない。》






その運命なのだろう。



一番近くの存在で…一番遠いのだ。



だから神様なんて信じない。



そう心の決めている。


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「どーしたー⁇最近笑顔が足りないぞっ♫お前らしくないから笑顔でいなさい。」

「お兄ちゃん。」

耳にはピアス。常時サングラス。銀髪で勉強などしている様子もない、男子校に通う兄だ。



「俺の大好きな笑顔が見れないと嫌だな。」

「お兄ちゃんにはやっぱり分かるのか。」

「俺を誰だと思ってんだ⁇」

「危ないバイトでもしてるのかと思ってたよ。」

「…⁉︎お兄ちゃん悲しいなーっ。ぐすっ」

「ごめんごめん。」



「なんかあったか⁇」


「好きな人が俺を避けてる気がする。」


「奏を避ける⁉︎ありえない。そんな奴ぼっこ…。いるわけねえだろ。」


「…。でもいない。俺は探してるのに。あいつは会いたくないみたいだ。」


「奏を避けるような人なのか⁇」


「…。違う。」

「じゃあ、探せ。見つけろ。話を聞け。誤解しとくのはその人に悪いだろう。」

「…そうだね。」


兄は外見とは違い、チャラくなったり真面目になったりするからタチが悪い。

「…明日もう一回探してみる。ありがと。

…ん⁇」

LINEの通知音だ。