会場全体が静まり返った。
奏と青ブロック団長が同時に地面に落ちた。
そして。奏が…奏は、横たわったまま動かない。
先生が奏に声をかけているが反応はないみたいだ。
静まり返った会場で、先生の声だけが響く。
前で放送をしている子が応援席に戻ってきて、
「青ブロック長がずっと首を掴んでた。奏くんは上で過呼吸になってても続けたから、地面に落ちて意識がない」
と言っている。
一方、澪はチアガールとして出ていたが、奏に何があったのか分からないままだった。ただ、地面に横たわる奏を呆然と見ているだけしか出来なかった。
奏は、先生が保健室に運んでいった。
女子はみんな心配しているのか泣いている人も多く、もう体育祭という雰囲気ではなかった。
そして、結果発表になっても奏の姿はなかった。
結果は…
赤ブロックの優勝だった。
だが、澪達赤ブロックは喜べなかった。
皆が黙り、結果発表の時も放送の音が流れるだけだった。
そして記念撮影をしている時、奏の姿が見えた。
車椅子に乗っていて、赤ブロックの二年に囲まれていた。
それを見て、生徒全員がやっと笑顔で優勝を祝う事が出来た。
奏も笑っている。澪と目が合うと、ニコッと裏のない笑顔を向けてきて澪は涙が出てきた。
奏は、車椅子から立ち上がろうと体を起こすが、うまく立てないようで先生にまた座らされていた。
帰り道ー…
「今日は優勝出来てよかったねー‼︎」
「沙梨も赤ブロックで良かったよw」
「打ち上げあるかな⁉︎」
「あったら行こーね‼︎」
澪と沙梨は久しぶりに一緒に下校した。
分かれ道にさしかかり、
「じゃあ、また明日ねー‼︎」
「ばいばーい‼︎」
奏のことは心配しなくていいと担任から話があった。それに笑顔だった。大丈夫。と自分に言い聞かせながら歩いていると。
「きゃっ」
「おい。」
「あ、っ‼︎」