あのね、先生。


…ずっとずっと聞きたかった声。

一瞬であたしの気持ちを引き戻してしまう、大好きな声。

聞き間違えるはずがなかった。

だってあたしはいつだって無意識に彼の姿を探していたんだから。


…優しくあたしに触れる指は、何度もあたしの頭を撫でてくれた彼のものだった。


「せ、んせ…っ」

会いたかった。触れたかった。

「んふふ、なーに?」


離れて会わなくなって、先生との関係は終わってしまったのに、辛い時いつだって一番に思い出すのは、先生のあのふにゃんとした笑顔だった。


「先生…っ」

「俺、もう茉央ちゃんの先生じゃないよ」

振り返るとあのときみたいにふにゃんと笑う先生がいて、ポタポタと落ちる涙を優しく拭ってくれる。

「茉央ちゃん…」

忘れようともがいても、姿を見ただけであのときの気持ちが溢れてきた。