「だったら一度だけ抱いてください、って言われて。そんなこと出来るわけないでしょ?」

ほんとは聞きたくないはずなのに、茉央ちゃんはちゃんと聞いてた。

嫉妬してんのかな。

口尖ってんだけど。

「多分、今日も俺が早く帰ろうとしたから、茉央ちゃんと会うって思ったんじゃないかな。」

「…だからあそこにいたの?吉野先生」

「うん、多分ね。近づいたのは俺からだから、ハッキリ言えなかったんだ」


俺、悪い大人に育ったわ。

吉野先生は何も悪くない。

「…茉央ちゃん」

「なに?」

「学祭の日、ここに来て俺が言ったこと覚えてる?」

吉野先生とのことがあって、改めて思ったのはやっぱり一つだった。

いつまでバレちゃいけない関係でいるんだろう、って。

傍にいてほしいのはずっと変わらない。自分だけのものにしたいのも。

だけど、このままじゃいられない。