吉野先生は少し驚いた顔をしてあたしを見た後、先生へと視線を戻した。
言った後に思ったんだ。
こんなに強く否定して、先生はどう思ったんだろうって。
｢…咲良さんもこう言ってるでしょ。ほんとに何もないんです｣
先生はそう言って、掴んでいたあたしの手を離した。
｢…だったらどうして、付き合ってくれないんですか？｣
今度はあたしが驚くことになった。
付き合う？何でそんな話になったのか分からなくて、先生に聞きたいけど吉野先生がいるからそれは出来ない。
｢好きな人がいるんです｣
すいません、と言って先生が頭を下げると、吉野先生は泣きそうな顔であたしを見て、離れていった。
その後ろ姿を見つめてると、吉野先生の泣きそうな顔が頭に浮かぶ。
｢…先生…｣
｢ん…？｣
何で、こんなに周りの人を傷つけながらじゃなきゃ一緒にいられないんだろう。
