あのね、先生。


「何してるんですか」

吉野先生が掴んでた手を後ろから引っ張られて、その勢いで体が傾く。

前にもあったよね、こんなこと。

あたしはそのまま後ろ向きに誰かの胸にダイブして、後ろから聞こえる声にすごく安心したんだ。


「吉野先生、いい加減にしてください」

「篠原先生…」

やっぱり先生だ。

あたしの後ろにいる先生の顔は見えないけど、声色が少し怒ってた。

「やっぱり、付き合ってるんですね」

やっぱり?

あたしの知らないうちに、先生は吉野先生から何か言われたのかもしれない。


「付き合ってないです!」

この人の様子を見てると、何だか認めるとマズイ気がして大きな声が出た。