「人違いじゃないですか?」
精一杯に平常心を保とうとそう言うけど、自分でも分かるくらい声が震えた。
「悪いけど、顔もハッキリ見えたの。間違いなくあなただった。」
「…あたしじゃないです…あの、あたし急いでるんで失礼します」
ダメだ。
ここにいたら何もかも崩れてしまう。
早く離れて先生に連絡したかったのに、あたしの手を掴んだ吉野先生に阻まれた。
「逃げるの?」
あたしを責めるような目と態度に、我慢していた涙がジワリと目に浮かぶ。
先生、どうしたらいい?
「あなた元は篠原先生のクラスの生徒だったのよ?いいと思ってるの?」
思ってないよ。
それがダメだってことは、先生と初めて学校で会った日から分かってた。
あなたに言われなくても、あたしと先生の方がよく分かってるんだよ。
「っ…離してください」
もう、やめて。



