あのね、先生。


引き留められて、名前を覚えててくれたのにいい気分がしなかったのは、きっと何となく分かってたから。

だって、きっとこの人はあたしと先生の関係に気づいてる。

どうしてかな。

先生と再会して、一緒にいるようになって、やっぱりあのときと同じように上手くはいかないの。


「…篠原先生が何ですか…」

「付き合ってるのよね?」

何の迷いもなく言った吉野先生は、何か確信を持ったようにあたしを見つめる。

先生が言うわけないし、あたしは親しい間柄でもない。だったら、一緒にいるところを見られた?


「…付き合ってないですよ」

「うそ、だってあたし見たの。あなたと篠原先生が手繋いでるところ」

前に一度会ったときだ。

どうしよう。この人に納得してもらえるような嘘をつける自信がない。

だからって本当のことを話すわけにもいかない。だって、絶対にバレちゃいけない関係なんだから。