あのね、先生。


何で吉野先生があたしのことなんて覚えてるんだろう。それに、何で今引き留められたの?

待ってた?

いや、でも話したのなんて数回だし、接点なんてないはず。

「…あの、お久しぶりです…」

あれ、あたし何でこの人のこと苦手なんだっけ。何が理由で苦手になったんだっけ。

「久しぶりね、咲良さん」

あたしの名前覚えててくれるほど、接したことあったっけ?


「何してるんですか、先生…」

「待ってたの、咲良さんのこと」

「え…」

美人で優しくて、評判のいい先生だった。

苦手になったのは…そうだ…


「篠原先生のことで話があって」


この人が先生を見るときの目が、女の人の目をしてたから。

多分、先生のこと好きなんだろうなって。