目の前にあるホールケーキを工藤先生と一緒に食べている時



「そろそろかな…」



突然、工藤先生がそう言って立ち上がった



「どうかしたんですか?」



「由愛は、そのまま食べてて」



そう言って工藤先生は、真ん中に置いてあるピアノの方へ向かった



なんでピアノの方に…?



呆然としながら工藤先生を見ているとピアノのイスに座った



一呼吸してからピアノを弾きだした



え?



なんで工藤先生が弾いてるの…?



私は、理解ができないまま演奏を聴く



しかも、この曲って…



「amazing grace…」



すばらしき恩寵という意味がある曲



私が外国の歌で1番好きな曲…



この曲を聴くと安らぐの…



私が1番好きな曲って知ってた…?



いや、それはないよね…



言ってないし…



それにしても、楽譜見ずに弾いてるのはすごい…



さすがだわ…



目を瞑りながら聴いているとやがて演奏が終わった



パチパチーー



湧き上がる歓声と拍手



工藤先生の演奏は、それほどすばらしいものだった



ぼーっとしていると突然、私の席にスポットライトが当たった



「え?」



「宮本由愛さん、こちらにどうぞ」