「っつーわけ」

とおれは煙草の火を消した。




「…そっか
その"奏さん"のこと尊敬してるんだね」

琉伊は今までで一番と言っていいほどの笑みを浮かべると同時に眉を下げて悲しげな表情をした。



「ああ、してる。
例え奏さんが俺のこと忘れてたとしてもずっとしてる。」

「…幸せだね、"奏さん"は。そんな風に思ってくれる人がいるから」

「…どうかな」







図書室の時間の流れは
ゆっくりゆっくり過ぎていく。




「わるいな、話付き合わせて」


「…ううん、全然。」






「俺さ
正直奏さんが俺のこと認めてくれるのか今心配なんだわ

まだ変われてねぇような気するから」


すると琉伊は
俺の頭に手をのせた。


「…おまっ…」


ガシガシと頭を撫でる。




「矢神は矢神でしょ。
"奏さん"は今の矢神が好きだよ

感情出すのへったくそな矢神がすきなんじゃないかな

大丈夫。"奏さん"は矢神のことずーっとずーっと見守ってくれてるよ
見捨てたりしないから」










何でこいつがそんなことわかんだよ

って思うのと同時に

なぜか不思議と心にストンと入ってきた。




奏さんもよくこうやって
頭を撫ででくれたんだよなぁ…


こいつが奏さんのこと知るわけねぇのに
奏さんが言いそうなやりそうな言動もするから、勘違いしてしまいそうになる。



「…ありが…とな、琉伊」


「いこっか、教室」






そういっておれたちは図書室を出た。
6時間目の授業に参加するために。