眠れる森の彼女

一瞬、呼吸が不能になった。


ぐうの音も出ないとはこのことだ。


彼女でもない吏那を彼氏でもない俺が縛る権利はない。


「とにかく各務は無性に苛々すんだよ」

「何それ!? 椎名っちの暴君!!」

「相変わらず各務は騒がしいわね」


心底、呆れたような表情でナミが近寄ってきた。


「やかましい各務を止めるのは織原くんの役割でしょうに」

「いや、面白いなと思ったんでね」


ずっと静観を貫いていた織原に一瞥されたのは各務じゃなく俺。


「ナミゾー! 椎名っちが俺に冷たいんだけど」

「あ、そう。ね、椎名。文化祭のミスター&ミス桜高のポスターが出来たの」