吏那とは美術室だけでなく廊下などで顔を合わせた時には会話を交わすようになっていた。


「椎名先輩は?」

「俺は……」

「日本史だよん」


いきなり俺と吏那の間に割って入る各務。


吏那は自分の前に進み出てきた各務に意表を衝かれたのか、瞬きの回数が増した。


「初めまして。椎名っちの大親友の各務です!」


各務は立ち尽くす吏那にまた一歩近づくと、紳士よろしく大袈裟な動作でお辞儀をした。


「誰が大親友だよ」


イラッと感情が疼いた俺は各務の肩を掴んで後ろへ引く。


吏那は困惑顔で俺と各務を見つめていたけど、

「……紅月吏那です」

と挙措正しく各務に礼をする。