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例えば昼より長くなった夜の空気が澄んでいることに気づいたり。


バイクで走りながら、肌を刺す風が冷たくて眉を顰めたり。


金木犀が仄かに香ったり。


そんな些細なことで秋の深まりを知る。


桜高は来たる文化祭の準備で、みな気が漫ろな様だ。


昼休み、放課後、LHRはそれに時間が費やされているけど、俺は当日ヴァンパイアにさえなってさえくれればいいと特に役割はなく普段と変わらず過ごしていた。


「お、吏那」


次の授業の為に廊下を歩いていると、吏那に出会す。


相変わらず吏那は一人で、俺に向けて小さく頭を下げた。


「今から何?」

「生物です」