俺は笑い、吏那は赤面し、あたふたと椅子を戻して着席し直す。


その動作が、まるでどんぐりを必死に追いかけて駆け回るコリスのようで、見ていて飽きない。


「椎名先輩。私、文化祭が楽しみになりました」


はにかんで微笑む吏那。


──やっぱり吏那はやべぇ。


「そりゃ良かったな」


吏那を迎えに来ている男が兄だと知ったからか、吏那と文化祭で一緒に居られることになったからか。


胸に広がる噎せ返るほどの甘酸っぱい感情。


昼休みがずっと続けばいい。


俺の望みを裏切るように吏那との時間は普段よりも早く過ぎ去ってしまう。