眠れる森の彼女

知らない言語で話されたように、吏那は首を傾げた。


そのきょとん顔をしたいのは俺のほうだ。


「いつも吏那を迎えに来てるだろ? その、男が」

「椎名先輩、知ってたんですか? あれは兄です」


兄……。


なんてベタなオチだろうか。


拍子抜けしたのと、何かめちゃくちゃ安堵してる自分とを。


やっべぇ。
嬉しくて仕方ねぇ。


妙に胸の内が弾んで、表情を維持するのが結構な難しさで。


「兄ね……」

「……毎日送迎は兄がしてくれてるんです」


吏那が気まずそうに視線を揺らしたことに、ちゃんと気がつけなかった。