眠れる森の彼女

吏那は自分の容姿に自覚ねぇのか?


うぜぇ各務が吏那を一目見ただけで、天使だの何だの騒ぐくらいだ。


「吏那なら、しょっちゅう男に声かけられそうだけどな」

「えぇ?! 一度もないです!」


また首をやや大袈裟に振った吏那。


そろそろ首の筋を痛めるんじゃねぇか。


「ま、吏那は彼氏いるか……」


声にして、後悔した。


ずっと胸の奥に去来していた吏那をいつも迎えに来る大人の男。


俺とは違う大人の男。


吏那本人に肯定されるのが、癪というかムカついて。


よくわかんねぇけど、胸の奥を締め付ける。


「え? 私、彼氏いたことないです」