眠れる森の彼女

吏那はカップを両手で持った。


わざわざ尋ねてないけど、今日も紅茶なんだろう。


「別に誰でもいいじゃねぇか」

「椎名先輩はミス桜高になる人には興味ないんですか?」

「ない」

「即答ですね」

「吏那はエントリーされてねぇのか?」

「あ、当たり前です! 私なんて……」


首をぶんぶん横に振って、力強く否定する吏那。


「俺は吏那が一番かわいいと思うけどな」


さらりと紡いだ台詞。


何の目論見も狙いもなく、素直に口にしていた。


しばらく黙り込んでいた吏那は、

「……やっぱり椎名先輩はずるいです」

と、弱々しい声でようやく口を開いた。