教室中に響いた大きく、けど緊張してるのがまるわかりの舌ったらずの声。


発生源は教室の戸口にたっている吏那で、注目を集めていることが耐えられないのか、人目に怯えるバンビのように震えていた。


「吏那」


俺は席を立ち、吏那に歩み寄る。


「吏那、どうした? 2年の教室にまで来るなんて」

「椎名先輩にジャージ借りっ放しだったので、返しにきました」


吏那が差し出したのは、ブランドの袋。


剥き出しで持って来ないのが吏那らしい。


「別にいつでも良かったのに」


取り出してみると、律儀にも洗濯までしてあるようだ。


柔軟剤の香りが仄かに漂ってくる。