眠れる森の彼女

傾きはじめた陽光が照らす木のテーブル。


吏那は開けた窓から風を受け、大きく伸びをした。


光のプリズムの中、まるで気ままに現れる警戒心の強い小猫だ。


「あまり窓の近くに居ると見つかっちまうだろうが」

「あ、そうですよね」


吏那は少し照れたように向かいの席へ座る。


安らかに過ぎる時間。


心地良すぎて、また眠くなってきた。


「椎名先輩って優しいですよね」

「別に優しくねぇよ」

「そんなことないです。椎名先輩は優しいって知ってます」


──ずっと前から……。


ああ、吏那の呟きが遠い。


「吏那にしかしねぇよ」