眠れる森の彼女

満面の笑みってこういう表情なんだと納得させられるような吏那の顔。


「そうこねぇと」


授業中の校内は静かで、いつもより足音を忍ばせて、吏那と歩く。


教師が廊下を横切った時は、吏那としゃがみ、やりすごすと顔を見合わせ、微笑み合う。


張り込み中の刑事か。
ターゲットを尾行する探偵か。


いや、追われる指名手配犯か。


何にせよ、こんな些細なことが楽しくてたまらねぇ。


「ラッキーですね。美術室使ってなくて」


吏那の濡れたジャージを開けた窓枠に干す。


美術室の日当たりは良好すぎるくらいで、吏那にジャージを貸してから半袖の俺で適温だ。


「日向ぼっこって気持ちいいです」