眠れる森の彼女

「いいです! だって椎名先輩が……」


吏那は遠慮したのか振り返って俺を見上げる。


この角度に上目遣い。


やべぇ。
やっぱり吏那は心臓に悪い。


「寒いだろうが」


後ろから吏那越しに蛇口を閉める。


吏那の片手を持ち、袖に腕を通させた。


ちょっと力をいれれば、簡単に折れちまいそうなほど細い腕だ。


もう片腕も袖に潜らせる。


当然、俺のジャージは吏那には大きすぎた。


ぶかぶかなジャージ姿に、不覚にもやられる。


もしかしたら、これが各務のよく言っている萌えってヤツかもしれねぇ。


「だめです! これじゃ椎名先輩が寒いです!」

「俺は男だからいいんだよ」