眠れる森の彼女

あえて軽く。


安っぽいナンパ士のような台詞だ。


「……椎名先輩……」


吏那は俺をこぼれ落ちそうなくらい大きく円い瞳を見開き、きまずそうな顔をした。


吏那が水道場で水に晒しているのは学校指定のジャージだった。


今日は風が冷たいのに、吏那は半袖の体操着姿で白い手は細いだけに寒々しい。


「……ジュース零しちゃって洗ってたんです」


吏那は不自然に笑った。


──誰が?


自分で零したわけじゃないだろう。


よくよく見れば腕は鳥肌。


俺は自分のジャージを脱ぐと、

「──ほら。着てろ」

と、吏那の後ろに立ち、肩からかけた。