眠れる森の彼女

***


「椎名ー! 今から体育?」


体育館へと向かう途中、廊下でナミが後ろから駆け寄り俺の横へと並んだ。


「相変わらずイケメン様はジャージ姿でもかっこいいね?」

「あー、眠い……」

「無気力なのも相変わらずか」


午後の体育は怠い。


眠いと呟いたなら、欠伸も招いた。


「そういえばさ、椎名」

「あ?」

「“紅月 吏那“ちゃんって1年なんだね?」


思わず、隣のナミに視線を落とす。


ナミは俺の反応を観察したかったのか、注意深く俺を見上げていた。


「桜高一モテるのに、彼女を作らない椎名から初めて出てきた女の名前だよ?
調べたくもなるじゃん」