眠れる森の彼女

俺への疑いが晴れようが、各務は頭を抱えて苦悶していた。


だから、そんな薄っぺらいもんなんだって。


俺に『好き』だの『付き合って』だの言ってくる女なんて、風が吹けば心変わりする程度の脆い気持ちでしかねぇんだよ。


馬鹿みたいに褒められてきた俺の容姿なんて、ただの生まれつき。


俺の何を好きだって言えるのか、告白されるたびに心が冷えていく。


「椎名先輩。どうしました?」


今日も吏那と美術室で昼食を摂る。


「何でも」


俺は無意識に吏那の胸元のリボンを見ていたらしい。


ネクタイピンはつけられていない。