「よくブラックコーヒーなんて苦ぇもん飲めるな」

「おいしいですよ」

「信じられねぇ。コーヒー牛乳でも苦ぇのに」

「椎名先輩の味覚こそ信じられないです」


案外、吏那は言われっ放しじゃなく頑固である。


ふわふわ、ぽやぽやしているだけの女だと侮ることなかれとでも主張されているようだ。


「いただきます」「ごちそうさまでした」を、きちんと手を合わせて御辞儀して言う。


米粒一つ残さず食べる。


吏那の家庭がどれだけしっかりしているのか吏那とそう時間が経たずとも窺い知れた。


偶に、俺のコンプレックスを刺激されたけども。