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日暮れが日に日に早くなっていく。


衣替えも迎え、校舎内に帯びる空気も秋色に染まる。


季節は変わる。
音もなく着実に。
今この瞬間にも。


吏那との美術室での密会は続いていた。


吏那に関する知識が俺の中に、一つ、また一つと増えていた。


例えば、吏那の水筒の中身は常に温かい紅茶だということ。


時に残暑が厳しい日もあったが、

「体を冷やすのは良くないみたいなんです」

と、吏那の持論。


常に紅茶はストレート。


レモンもミルクも必要ないらしい。


その舐めれば甘そうな見かけとは裏腹に吏那は毎朝ブラックコーヒーを飲んでいるという。