眠れる森の彼女

「俺はそこまで短気じゃねぇよ」

「え? そうじゃなくって、私の喋りが下手だからって意味で……」

「落ち着けって」


すぐにあたふたする吏那がツボに入って仕方ない。


くつくつ笑う俺を眉を下げて吏那はじっと観察している。


「安心しろ。俺も喋るの得意じゃねぇから」


得意じゃねぇっていうか面倒なだけ。


不思議と吏那とは面倒だとか思わずに自然と笑っている。


「弁当こってるな。吏那が作ってるのか?」

「いえ。これはお母さんが、久しぶりだからはりきって作ってくれて」

「久しぶり?」


吏那はそこで唇を閉じた。