眠れる森の彼女

吏那は目を真ん丸く開いてから、

「椎名先輩、甘党なんですね」

と、宝物を見つけた子供みたいに無邪気に目尻を下げた。


「悪いかよ」

「え? 悪くないです! 少しもっ!!」


フォークを置いて慌てふためく吏那。


その必死な困り顔が可愛くて、もっと困らせてやれと俺の中の悪魔が囁く。


「怒ってねぇよ。ほら、さっさと食え」


ただでさえ整いすぎて冷たいだの怖いだの言われる俺の顔。


吏那を怯えさせるのは本意じゃねぇ。


俺もメロンパンを食い始めると、吏那は安心したように微笑む。


「良かった。私、喋るのが苦手で、椎名先輩を怒らせたのかと思ったんです」