眠れる森の彼女

ストローを唇に挟んだまま、表情を無くす。


「何だか付けられちゃって……。撒くのに苦労してたんです」


吏那は廊下を確認してから引き戸を閉めて、こちらに歩み寄ってくる。


薄い反応しか返せなかったのは、吏那が来た時の準備が出来てなかったから。


準備って何なんだよ。


「お邪魔していいですか?」

「あ、ああ……」


吏那は俺の斜向かいに腰かける。


「わ、机が温かい……!」


木材で出来た机は日の光を存分に吸収して温もりを放つ。


吏那は小さな弁当箱と白い水筒を取り出した。


「小せぇ。それで足りるのかよ」