眠れる森の彼女

***


──少しも落ちつかねぇ。


昼休みの美術室で一人、コーヒー牛乳のパックを飲みつつ、ちらちら扉に目を遣る自分が女々しくて嫌になる。


もう昼休みも半分は過ぎ、普通の生徒だったら昼食を食べ終わって談笑に入っている時分。


来ないってことが吏那の答えだろう。


諦めが気持ちを塞ぐ。


ん?
諦め?


ってことは俺、吏那に期待してたのか?


──ガラッ
その扉は唐突に開いた。


「椎名先輩……遅れました」


桜高指定のブラウン革のバッグを狭い肩に引っ掛け、吏那が現れた。